彩のキミ

第一話 始まりの時








「どうやったらそんなにポケモンと仲良くなれるの?」

いつもやってることだけどまったく種が明かせなくて、俺は疑問を口に出した。
その人は目を瞬いてから、ほわっと微笑んだ。

「私はね、ただ撫でているだけの様に見えるけど本当は色々なことをしているんだよ。」

そういって腕に抱いたまだ小さな、目も開いていないピカチュウをそっと撫でてしゃがみ込むと、
まだ人の半分もない背丈の俺に抱かせた。
むすっとした顔をしている俺に苦笑すると、もう少し種明かしをしてあげようといった。

「大切なのはこの触れる手に君が思っていることを詰め込んで、伝えたいと願うこと。
 大事だと思ってることやそばにいたいと思う気持ち。全部の気持ちを含んだ複雑な思いを声や手に宿せばポケモンはわかってくれる。」

やってごらんと託す声に、俺は手で額をとんとんとノックして伝えたいと願ってから、ピカチュウの閉じたまぶたをそっと撫でた。
するとまぶたがヒクヒクと動いてうっすらと目が開いていき、びっくりして覗き込んでいた俺の目を丸い目で見た。
できた喜びにばっと顔をあげると、その人―フィオネさんは微笑んでいた。

「ほら。できただろう?」

そういって頭を撫でてくれたフィオネさんといて、俺はピカチュウを抱いた腕が少し痺れたなぁなんて思いながら
どこからか湧き上がるじーんとした暖かさを抱きしめた。
だまりこんだ俺を不審に思ったのかフィオネさんは俺の顔を覗き込んだ。

「俺、フィオネさんみたいなポケモンブリーダーになる。」

フィオネさんはぽつりと言った俺の言葉に目を見開いた。
数瞬後目じりをたらしたフィオネさんがおこった俺を抱きしめて頭をぐしゃぐしゃに撫で回していた。


  俺はあの人みたいな魔法使いになりたかったんだ――